2018年6月9日土曜日

<歴史マニアの半歩深読み> 新大河『西郷どん』 (2)

過去最低レベルで不人気って本当?


この10年で大河ドラマを最後まで観た確率が20%の私ですが、『西郷どん』は最初の記事を書いてから3か月半、毎週録画を欠かさない珍しいお気に入りになっていました。

が、どうにも視聴率が非常に低かったり薄っぺらいという低評価が多いとのこと。

林真理子が歴史扱う時点で深さは分かるだろと言いたいのですが、それより何よりこの面白さが分からないのかと。


別に他人が観ても観なくても極めてどうでもよいのですが(笑)、時代小説なんて書いて小さい賞を獲ってしまったりランキング1, 2位を維持する歴史ブログを運営する身としては、せっかくなので魅力を言葉にしておこうかなと。

1円にもなりはしませんが、まあ、単なる趣味ですな。

<前回記事>


ある意味「まだ始まってもいない」


さて、本作で特徴的なのが徹底的に西郷の「人物」を描いている点です。

もう6月ですが、ある意味まだ「幕末」は始まっていません。

西郷の壮絶な生涯にとってはサブシナリオどころかミニゲーム程度の奄美大島にまさかの1か月を費やすなど、幕末を観たい大半の方にとっては確かに退屈なのかもしれません。

「歴史じゃなくホームドラマかよ」という声があったとしても若干納得はできる。

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ただ、そこがこの『西郷どん』の魅力だと思います。

島流しにあった先で子供を作った。この一行で済ませ得る出来事をあそこまで人と人との絆から描くのはさすがです。林真理子の武器が(珍しく?)非常に上手くはまっている気がします。


西郷が永久の別れをし薩摩に帰ってしまう時など本人たちより泣きました。笑

二階堂ふみと一生島で暮らせるんだからもう日本国とかどうでもいいじゃんかと。笑


日本の歴史上最大の内戦「戊辰戦争」


「幕末が好き」という人は多いですが、新選組や奇兵隊を筆頭に「戦いが好き」という程度であったり、政治家に多い(虚像の)坂本龍馬への憧れやら維新や志士などといった生き方(死に方)への漫画的興味が大半な気がします。

私が他の歴史記事でも書き続けている通り、歴史なんて勝者の作文であり、特にこの幕末には長州による悍ましいテロや会津を代表としたその悲惨すぎる殺戮被害者がいます。


もちろん時代の大きな流れがあり組織がある中での個人なわけですが、「革命に犠牲は付きもの」などという抽象的な話では全く収まらないものがあります。彼らが昭和陸軍になるわけですからね、毎回言いますけど…。


時代の捉え方が多様だからこその「人物作品」


少し前までなら歴史は「楽」だったと思います。物語が決まっていたから。

しかし、最近は研究が進んできたり信憑性が高くかつ斬新な仮説も出てきたため、「最初に作られた物語」をそのまま映像にしてももはや価値がありません。


どの説をどれだけ取り入れ、歴史の空白をどう埋めて何を伝えるのか。

小説でもドラマでも漫画でも著者の歴史センスがより問われる時代になったと思います。


その点から言って、人物に焦点を当てて掘り下げる西郷どんは「上手い」。世界観を確立しその土俵の中で負けない勝負を続けている感じでしょうか。

そのため私のように一度気に入ってしまうとサトウキビを刈り取っている二階堂ふみをぼんやり眺めているだけで「今回もよかったわ~」とかなるし、入り込めないと「……なんだこれ」となるのかなと。


ここからどう描くかが真価


ここからいよいよ戦いです。それは単に幕府軍や長州とドンパチやるという意味ではありません。

と言うか、実は西郷隆盛自身はあまり戦場で指揮はしません。後に海軍大将となる弟が戦場で活躍しました。

西郷はこれから、先ずは薩摩の中で戦うことになります。

そしてもちろん、最後は無二の親友であった大久保利通と…。


ハートフルだけでは満たせない幕末。いよいよどう描くのか見届けるのが楽しみです。


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著者:ひさなお
 
 TOEIC満点、作家、投資家、IT企業グローバル人事、馬券師。
 慶應義塾大学→UCLA→大手IT企業。

  第3回マイナビ作品コンテスト最優秀賞受賞。 

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